#1:マイクロ化するコンテンツ
–Wordのノートモードでは、書いたメモにカーソルを合わせると再生されます。
林:そういうデジタルペンも出てきた。ペンでメモを書いて、メモを書いた時のノートをなぞるとアノトペンと同じ仕組みでそこから再生してくれる。本当、だんだんシーケンシャルな時代からランダムアクセスの時代に入りつつある。まさに、マイクロ化するコンテンツというのはそこ。
脱線からいきなり始まったが、これから作ろうとしている本は、ちょうど世紀の変わり目くらいからきっといろんな面白い変化が同時に起きてきた。iTunesにしても2001年に登場したし、ブログも2001年のちょっと前からあったとはいえ、実際には911以降急速にウォーブログという形で広まってきて、我々が知っているブログ、SixApartが出てきたのも2001年前後。ちょうど世紀の変わり目にいろんな新しいものが出てきて、それによってインターネットを使ったコミュニケーションも本当に変わってきた。
Googleとかも実は起業したのは98年だけど、実際に大きくなり始めて注目を集めるようになったのは2001。2001年にラリー・ペイジが初来日。僕も2001年のタイミングでインタビューしている。グループインタビューだが。
20世紀から21世紀で、みんなの気持ちが高揚したのもあるかもしれないが、いろんな化学変化が起きて、世の中、急速に進化し始めてきた気がする。
インターネットがこれまで何に使えるかわからない20世紀型から、より我々の欲望を満たしてくれるのにかなり近い形のインターネットに変わりつつある部分もきっとあって。
そこで1つ見られるトレンドが、今日これから話し合おうと思っているマイクロ化するコンテンツ。
例えば、iTunes以前は、アルバム単位で購入して、最初の曲から最後の曲まで連続して聞くのが当たり前。けれど、iTunesだと1曲単位で、どの曲を買っても99セント。で、この曲とこの曲を集めてプレイリスト、ユーザーの側がどんどん、聞きたいアーティストの聞きたい曲を集めて聴くという、そういった習慣を実現したのがiTunes。
ブログも、それまでのWeb上のコンテンツ、個人の発信のコンテンツにしても、これは林信行のコンテンツと言ったら、略歴や最近の活動がまとめられている感じだった。あるいは、日記サイトもシーケンシャルに毎日の出来事がまとめて大きい固まりで書いてあったものが、いきなり、1日の中でも、例えば、今日見てきた美術展についてとか、そういったトピック単位で記事が作られるようになって、記事1個1個にパーマリンク、URLが用意されたことで、Googleで検索して、いきなりブログを知らない人がそのトピックだけを取ってこられるようになった。
それがマイクロ化するコンテンツ。より、どんどん小さい単位に、欲しいところだけつまみ食いできるようになっていく流れの、最初の第一歩だったのではないかと思います。
それが今やどんどんさらに加速して、今のインターネットで一番話題になっている、Twitterだけども、これは本当に140文字という、まさに情報の分子みたいなレベルに落ちてきて。最初はその140文字は、文字情報だけにしか使われていなかったが、そのうちiPhoneから使えるTwitterクライアントが出てきて、同時期に誰かがTwitterのつぶやきの中にURLを、それも短縮URLを使って埋め込めるようになってから、だんだん写真をiPhoneで撮ってその場で見た景色をTwitterでつぶやくできる、画像をつぶやける。録音した音をつぶやけるようにも。そういった、つぶやきのマルチメディア化。
マイクロコンテンツがマルチメディア化して、しかもTwitterという一カ所だけ見ていれば、あらゆるものが見られるという状態ができてきた。
それがTwitterのいちばん、何だろう、人気がある理由の1つ。
–ブログから始まったマイクロコンテンツ。最初の人たちは、マイクロコンテンツを意識していた? どの時点で意識し始めたんでしょう?
林:ブログの歴史は、最初はWeblogが、WeBlogになってというのはあるが、そこらへんの細かい話は思い出せないが。しかし、最初のころのブログに全部パーマリンクがあったかというと、全部ではない。
–ブログ的な形式を実現するために、DBを使うようになって、そこでみんながパーマリンク、それぞれ持てばいいという自然発生的なものなんですかね。
林:最初の頃、初期の頃、トラックバックはないにしても、コメント機能はあったじゃないですか。コメントで対話形式になっていた時に、1個のトピックに複数の話題があると、面倒くさい。細分化されていく。そういうプロセスはあったのでは。想像でしかないが。
–掲示板との違い。
林:掲示板は掲示板でそういった細分化があったと思う。掲示板はスレッドとして、日本の掲示板のスレッドとはちょっと違うが、海外の掲示板だとコメントがツリー構造で伸びていく。例えば、今で言うと、スラッシュドットのコメント欄はそうだと思うが、このことに対して、誰々がコメントを書くと、それに対してコメントが書けて、別の部分にコメントを書くと、さらに細分化していく。やっぱり、マイクロ化していくのは自然の流れ。
大きなベクトルとしてあったのではないですか。それが、結局の進化のプロセスは双方向じゃないですか。実際に出してみて、世の中で実際に使われるユーザビリティの部分。ヒューリスティックな部分。使わせてみることで、それを観察することで見えてくる本質があって。そこでだんだん浮き彫りになってきたのが、コンテンツはマイクロ化していった方が、やりやすいというのが見えてきて。それでまず、ブログという形でパーマリンク単位で分けられたブログに別れて、そこからだんだん細かくなっていたのでは。
–ブログが広まった時に、Googleで検索の結果にやたらブログが上位に来る。SEOをやっている人が気づき始めたということもあるかも。
林:ブログとGoogleの台頭がほぼ同じタイミングというのが、重要な気がする。あそこで、パーマリンクの重要性がさらに強調されて、今のブログのスタイルが出来てきたのではないかなあ。
–検索しやすい情報になっていったという感じ?
林:そうですね。しかも、その時に、山路さんがいったように、ブログは面白くて、技術だけでなく、カルチャーの側面も非常に大きい。たぶん、ブログをやっていた人たちは、カルチャーのところも考えている人たちで、リンクや、できるだけ、自分たちで全部の話題を説明しきらないで、できるだけ他にリンクしていこうというカルチャーができたからこそ、Googleがますます成り立ちやすくなったという部分もあるだろうし。TwitterのReTweetも、引用元を明確に。あれもブログとかはまさにそう。ブロガーは、あとでマナーの違う人たちが来て、それは良い悪いは別にして、全員が引用元をはっきりしないで自分の手柄にしている人もいたが、少なくとも最初の頃のブロガーは必ず引用元を明確にしていたし。何でもかんでも自分のブログの中で説明しないで、できるだけ他のところにリンクしていこうというカルチャーがあったからこそ、(Googleの)ページランクも機能するようになったという面もあるだろうし。
–最初から想定されていたことではなく、技術やカルチャーが化学反応。
林:みんな、いいじゃんいいじゃんとどんどんやっていった面があると思うんですよね。
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